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HOME > 小倉正樹のニナルハズ物語 > 第6回 外装部品でより’88らしく 2012/04/09

第6回 外装部品でより’88らしく

’91年式の黒のGTI、“ニナルハズ号”はもちろん健在だ。いや、長い間、休んでしまって申し分けない。前回の第5回をアップしたのは、昨年の11月末か12月はじめ。もう新年度を迎えてしまったから、4カ月近くのご無沙汰、音信不通だったことになる。

 

 

 

第5回で少し予告した、’88年式のGTIにするための最後の外装の変更、すなわちアーチモール(オーバーフェンダー)やリップスポイラーの装着は、すでに昨年11月の段階で終わっていた。作業を実施してくれたのは、“ヒッシー”こと菱川クン。オグラとしては、“ニナルハズ号”完成記念イベントとして、長距離ドライブを敢行する予定でもあったので、各部の点検も依頼していた。当然といえば当然だが、外装部品の装着作業は順調に進み、各部の点検も取り立てて問題はなしということでほどなく終了した。

 

 

しかし、これが後で結構面白い物語になってしまうのだ。その面白さをどうまとめようかと考えていて、この第6回が遅くなってしまった、なんていういいわけは、みっともないからやめておこう。

’88年式のGTIは、前後のスモールバンパーを含め、ボディ周囲に赤いストライプを巡らせている。それは最後期のビッグバンパーになった時点でなくなっていて、前期および中期GTIの重要なアイコンになっている。’88年式では、太くなったサイドプロテクションモールそのものにではなく、すぐその上に赤く細いモールを貼り付けていた。やればできるにしても、そこまで頑張ってもという気持ちもあって、その赤いストライプの復元は諦めることにして、アーチモールとプロテクションモールの装着に留めることにしたわけだ。

菱川クンは、そのあだ名からのイメージだろうか、どうしても必死という言葉が浮かんでくるが、それはこちら側の思い込み。いっちゃあなんだが、彼自身はいたって、クールかつイージーゴーイングだ。それは、肯定的に意味合いを含んでの、おおらかさなのだ。

聞けば、菱川クンは、スピニングのスタッフのひとり、“てっちゃん”と呼ばれている中西さんの大学時代の同級生。筑波大から大学院に進んで、公務員試験を受け続けてきたそう。この間、もちろんパラサイトシングルで、本人も「当たり前に親と暮らしてました」というぐらい、これという切迫感はなかったようだ。普通のサラリーマン家庭の三男坊とのことなので、きっと放っておかれたに違いない。オグラはそう感じた。

 

ここで、てつ中西の解説が入る--。

「僕らの世代ってそうなんですよ。大学を卒業という時は、就職大氷河期で、実際に就職できたのは6割ぐらいですかね。だから、いまでもパラサイトっていうヤツは多いですよ」

 

スピニングに加わったのは、一昨年の2月からだから、もう2年以上働いたことになる。キッカケは、菱川クンの彼女が中西さん(てっちゃん)に「なんとかして」と相談したことから。中西さんは「ウチで働いてみる?」と、菱川クンに聞いたそうだ。菱川クンは、なにかを変えなければと思っていた時期らしく、この誘い受けることにしたそうだ。ものすごい方向転換ではある。

 

 

 

ここで再び、てつ中西の解説が入る――。

 

「大学の頃は、シトロエンのAXに乗ってましたね。ヘッドに水が回っちゃって、オーバーホールしたことがあります。ヘッドのボルトを折ったりして、随分長い間、放りっぱなしにしてましたね。結局、ボクが手伝って直したんですけど。なんというか、大胆なヤツなんすよ、菱川クンは」

 

彼の作業は、IQの高さが伺える。効率重視というか、いかにもクール。エアツールを多用するから、時間はかからないものの、見ている者にとってはなんだかモノ足らない。通常、整備作業は、人に見せるものではないから、それはそれでいいのだが、少し演出が欲しいような気もする。魅せて欲しい。外装部品の装着も、なんなく終わってしまって、オグラとしては拍子抜け。

点検にしても、そうだ。菱川クンは、要領よく、ポイントを流れるように点検していく。ベルト類の張り具合、ブレーキのパッド残量、灯火類、冷却水のチェックなど、そこに不具合があれば、ササッと調整、あるいは部品交換、補給作業などを行なう。淀みがない。

 

とはいえ、菱川クン、現段階、車検整備などルーティンでこなせる仕事については、なんの問題もなくこなしているようだが、イザ、工夫を必要とする作業については、もうひとつという部分はあるらしい。

“コバさん”ことスピニングの重鎮、小林さんによれば――。

 

「うちのエース。でも、まだチョイ経験が……」

 

 オグラは菱川クンのことを、“スピニングガレージのはやぶさ”と、位置づけておきたい。小惑星“イトカワ”の微粒子を持ち帰った、あの探査機“はやぶさ”だ。傍目、彼の生き方はなにやら危なげ。サポートを必要とするように思える。しかし、なんだかんだ危機を乗り越えて、やがて最後の最後に大きな成果を残してくれるようにも思う。もちろん、だからといって、大気圏突入時のように燃え尽きてもらっては困るのだが……。

 

 点検も終えた菱川クンは、頼んだわけでもないのに、やおら洗車を始める。オグラが完成記念として長距離ドライブに行くことを承知していて、そこそこボディをきれいにしておかなくてはと思ってくれたらしい。一見、仏頂面で、取っつきにくそうだが、実はこんな気遣いもしてくれる。おかげで、’91年式のGTIは、ほぼ完璧に’88年式のGTIになったような気がした。

こうして、“ニナルハズ号”は一応の完成をみた。となれば、当然、完成記念イベントを開催しなければならない。それはつまり、FGXプロジェクトに倣って、奥能登は珠洲の二三味珈琲を訪ねること。だから、11月の末、オグラはひとり、東名、名神、北陸道を経由しての奥能登ツアーを敢行した。前述したが、これがまた、面白い物語になってしまうのだ。

 

次回、乞うご期待。今度は、あの“はやぶさ”みたいに、長い間音信不通になることはないと思うが……。

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